ダイナミック遊びで人間関係を作ります



人や集団との関わり方の問題

 「人や集団との関わり方」とは他の人々と親しみ合って生活するために、友だちや身近な人々とのふれあう楽しみや喜びを得ること、友だちとの生活の中で決まりや秩序等の必要性を知ること、社会生活に必要な習慣や態度などを身につけること等をさします。
 また、年齢が比較的近い者同士の関係で同等な仲間との対人関係である「仲間関係」も大変重要です。幼児期では遊び仲間を積極的に求めるようになり、仲間との相互作用も活発になってきます。また、学齢期以降では、仲間集団を形成したり、安定した友人関係が成立するなど仲間関係は生活の中でも大きな意味を持つようになります。
 集団での関わり方とは「子どもと子ども」「子どもと大人」「子どもと子どもと大人」の構成になります。集団の人数が多くなればなるほどこれらの関わり方はより複雑さを増すため、ニーズを抱えている子どもにとっては、ハードルが高くなります。
 ハードルが高くなる原因として考えられるものに次のものがあります。
①一人あそびが長く他の子どもと関わって遊べない子ども
②特定の子どもとは遊べるが、それ以外の子どもとは遊べない子ども
③他の子どもと遊びたい、関わりたいとの思いはあっても遊び方、関わり方が分からない子ども
④自分勝手な思い、考えが目立つ子ども
⑤グループや集団で遊んでいても自分勝手にルールを変えたがる子ども
⑥勝負にこだわる子ども
⑦場を乱す子ども
⑧初めての人場所に慣れにくい子ども
⑨集団のなかに入ろうとしない、入れないい子ども
⑩不安が強い子ども
 これらの問題点をかかえている子どもは、学習レディネスの獲得が妨げられます。
 たとえば、軽度発達障がい児の言葉の発達の遅れで考えてみると、以前は全く話ができない、話せる言葉の数が少ない、年齢と比較して幼い話し方をするなど、言葉の発達が全体として遅れている状態の子どものことを指していましたが、最近では、友だちと遊べず、保護者が語りかけても真似(模倣)して言葉を言おうとしない、指示が通らずしつけができない、一人遊びが長く、グループ遊び、集団遊びに発展しないなど、幼児期からの対人的、社会的行動の発達の遅れやひずみの一面として言葉の発達の遅れを示している子どもが増えています。
 自分一人でいるときには元気が良すぎても、注意集中が悪くても、人や集団に関わりにくくても、困ることはありません。人や集団に関わらなければよいのですから。でも、それでは学校生活や社会生活は送れません。そこに何らかの対策が必要になるのです。

集団指導とダイナミック遊び

 軽度発達障がい児のこれらの問題は、人や集団との関わりの中で起こることです。
 これらの問題は、人や集団の中で明らかに表面化するものであり、また、人や集団の中で問題点が増幅されていくことになります。軽度発達障がい児が人や集団との関わりの中で、トラブルやケンカなどの問題が起こることにより、自分は人や集団とうまく関わる事ができないと考えるようになり、この事により否定的な自己像が形成されていき、より一層人や集団とかかわることがむずかしくなります。
 そのようになる前になるべく早い年代から、集団の中で多くの人との関わる場面を作り、そこで人と集団とのかかわり方を学び発達促進を図る必要があります。
 NPO法人遊育・遊びを育てる会は、これらのことをねらいとして「集団指導」を行なっています。
 集団指導の中で特に力を入れているものに「フリー遊び」があります。指導時間の多くをフリー遊びについやしています。
 みなさんが考えるフリー遊びとは子ども達が各自本人の遊びたい遊具、玩具などを使って自由に遊ぶイメージだと思います。しかしここでのフリー遊びはボールや段ボールなどの遊び道具はみんな同じものを使い、その中で、緩やかなルールを作り、全員が楽しく遊ぶことをいいます。
 トラブル、けんか、問題行動等が多い軽度発達障がい児ですが、これらはパターン化された場面ではあまり問題を起こしませんから、これらの問題を起こすフリー遊びの場面を増やし、その中でトラブルなどを解決し、人や集団の中で上手な関わり方を学んでもらうようにしています。
 またフリー遊びで自分で考えた行動が増えたり、生活管理・行動管理が自分でできるようになったり、問題解決の能力が養われることなどもねらいとしています。
 集団指導の中で多くの人とかかわる経験不足や発達の遅れから起きているメンタル面に弱い子供が多いため、集団指導の中で多くの人とかかわることでメンタル面の強い子どもに育ってほしいとの願いをもっています。
 集団の中で多くの人と関わることは、「本人・相手・物」との3 項関係が成立しダイナミック遊び・群れ遊びによって3項関係を強化することで、ことばの発達促進につながります。
 ダイナミック遊びで遊びの楽しさ・おもしろさがわかるようになれば、本人がもっと遊びたい、人とかかわりたいとの思いが強くなっていきます。そうなることで本人から仲間を求めるようになり、孤立防止・仲間づくりがすすみます。
 学習面では、直接国語・算数などの教科学習を教えるテクニックによるもの・学習用のテキストを使い学習プログラムによるもの・家庭学習の進め方などありますが、それ以外にも人格的な要因によるコントロールされるものとして、学習態度・意欲の形成の確立・興味関心の幅の広がり・人間関係の高まり・ことば、コミュニケーションの強さ・社会性が育つ等の能力があります。軽度発達障がい児は、これらの後者の能力に問題があるため学習面につまずきます。集団指導は後者の能力を獲得させるものであり、これらの能力を獲得させることで、国語・算数等の教科学習をつまずかせないようにさせることを目的としています。
 集団の参加人数は10人から15人ぐらいで、年齢構成は3才から小学校6年生までです。全体での活動もあれば、二つ三つのグループに分けての活動もあります。
 軽度発達障がい児は個々のレベルや好みの違いまたはそれぞれ興味・関心が違うため、全員を巻き込んでの遊びにならない事が多い。集団指導の難しさはそこにあるのです。その解決策は、集団指導は全員参加のため、集団遊びに参加するすべての子供が楽しく活動の場に入れるようにするためには、ある程度の工夫が必要です。その工夫としてあるものに、ダイナミック遊びがあります。ダイナミック遊びであれば、どのような子供でも楽しく遊びに参加することが可能です。
 







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